自己には厳しかったアーノンクールが、自ら「これまでの自分の全ての録音の中で最高の出来」とした2003年のライヴ録音。アーノンクールは手兵コンツェントゥス・ムジクスおよびアルノルト・シェーンベルク合唱団、練達のソリストとともに、モーツァルト最晩年の心情に深く共感し、自らの死を見据えて慟哭する作曲家の魂に寄り添っています。ピリオド楽器を使用してスコアの隅々まで明晰に描き出しながら、振幅の大きい感情表現で聴く者の肺腑を抉り、作品の本質をこれまでにないほどクリアに描き出すその解釈は、アーノンクールが長年歩んできた道のりの頂点に間違いなく位置するもの。この作品の録音史上、避けて通れない名盤と申せましょう。 (C)RS