名実ともにドイツ音楽の世界的巨匠と目されるクリスティアン・ティーレマンとブルックナー演奏の伝統を今に継承するウィーン・フィルが2023年に完結させた交響曲全集の第1弾となったのがこの第8番。作品の構成を大きくつかんだ流麗なしなやかさが印象に残り、弦を対抗配置にして作品の構造を浮き彫りにする効果が絶大。ウィーン・フィルの持つ濃厚・芳醇な音色を生かし、早めのテンポで進めつつ、ダイナミック・レンジを大きくとり、時折ぎょっとするような隈取の濃さを聴かせるのもティーレマンらしいところ。19世紀の交響曲形式の頂点ともいえる大作の決定的な名演です。「ベスクラ」初登場。 (C)RS