[ 2025年 6月 10日付 ]
ハイエンドオーディオ担当の"ichinose"です。
今回は、フィデリックスより発売された、MCカートリッジ用ヘッドアンプ「SATELLITE(サテライト)」をご紹介いたします。
この「SATELLITE」は通常のヘッドアンプとは大きく異なり、ヘッドシェルに内蔵したFETにて電圧→電流に変換して、MCカートリッジの微弱な信号が接点で大きく劣化してしまう弱点を克服できる【画期的?】な商品です!!
※接点は微少電流で抵抗値が上がる事は良く知られています、そのためMCカートリッジなどの微少信号は接点を通過する度に劣化してしまいます。
そこで、信号レベルをなるべく前段で増幅してから接点を通過させれば、この悪影響を軽減でする事が出来ます。
◆【画期的?】の?とは・・実は過去に同様の製品が発売されていました!!
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、同様の方式は40年以上前にYAMAHAから発売されていました。
MCフォノイコライザー「HA-2(1979年)」と「HA-3(1982年)」が同じ方式で発売していました。
今回ご紹介の「SATELLITE」はその復刻版とも言える製品なんです。
※ただし、「SATELLITE」はイコライザーは内蔵されていないMCヘッドアンプとなります。
実は、このアイデアはフィデリックスの中川氏が自分用に1969年に発案したそうですが、市販はされませんでした。
その後、縁があってYAMAHAから発売され、音質は絶賛されましたが、通常のシェルが使えなくなってしまう汎用性の低さと、シェルの抜き差し時に大きなショックノイズが出るなど、取り扱いに注意が必要なため、当時もマニア向けの製品と認識していましたね。
◆MCカートリッジの微弱な信号が接点で劣化するのを防止。
カートリッジの出力信号は、ヘッドシェル、アーム内部の信号ケーブル、出力ケーブルを通ってアンプの入力端子に接続されていますが、この間にある多くの金属接合部分は一種のダイオードのように動作する非直線性を持っています。
これにより微少信号はダイオード特性のノンリニアな部分の悪影響を受けて歪んでしまいます。
「SATELLITE」は金属接合部分のダイオード特性のノンリニアな部分にひっかかるマイクロボルトオーダの信号にバイアスをかけており、ダイオード特性のリニアな領域を使うことでピュアな信号伝送を実現しています。
◆専用ヘッドシェル内にセットした無帰還初段増幅(電圧-電流変換)
回路を構成する初段の片側のFETをヘッドシェル内部に搭載し、もう片側を本体に搭載しています。
これによりヘッドシェル内部のアンプで電圧から電流に変換された信号は、ヘッドシェル内部のアンプを動作させるための電源電流に乗って本体に伝送されます。
このように従来マイクロアンペアオーダーの交流電流を流していた伝送系にアンプの動作に必要な数十mAの電流を流すことによってMCカートリッジの微少信号はノンリニアの悪影響から解放されます。
◆出力はイコライザーのMM入力端子に接続
定格入力100μVに対して26dBのゲインを持っており、アンプ(フォノイコライザー)のMM入力端子(ポジション)に接続して使用します。
◆単2型ニッケル水素・充電池・左右独立配置電源(バッテリー駆動)
単2型ニッケル水素充電池4本直列で左右独立に配置し、計8本使用(動作時はダイオードで左右独立電源になります。)
内蔵バッテリーの充電用(6V)ACアダプター付属。
※充電状態はスイッチをTEST側にしてランプの明るさで判断出来ます。(過充電防止機能内蔵)
※消費電力は極僅かのため、数ヶ月に1度、半日程度充電すればOK。
※使用時は電源コンセントを抜いてバッテリー駆動となります。
◆こだわりのPRP社の非磁性抵抗やPPSフィルムコンデンサーやNichiconのFG電解コンデンサーなどを採用
入力換算雑音電圧は-154dBVと本格的な性能。動作電流はステレオで22mA。
■ 仕 様 ■
形式:ヘッドシェル内アンプ内蔵型MCヘッドアンプシステム
入力換算雑音電圧:-154dBV(RIAA+IHFA)
ゲイン:26dB
使用バッテリー:単2型ニッケル水素を4本直列で左右独立に配置し、計8本使用。6V充電器が付属
ヘッドシェル:MITCHAKUシリーズ付属(他のMITCHAKUシリーズにも対応可)
シェルリード線:φ0.12、6NOFC7本撚りを使用
寸法(mm):200(W)x150(D)、50(H)
重量:1.0kg
※ヘッドシェルは「MITCHAKU-L」が標準となりますが、「MITCHAKU」「MITCHAKU−K」にも変更可能です。(注文時にお問合せください)
◆担当者より
ご紹介のフィデリックス「SATELLITE」はMCカートリッジの宿命とも言える接点ロスを大幅に解消する事が出来る画期的な製品である事は間違いありません!!
ただし、ヘッドシェルにアンプを内蔵した独自の構成となっているため、使用するにあたり取り扱いに注意が必要となりますので、ご理解した上でご購入ください。
・カートリッジ(シェル)の脱着時にショックノイズが発生しますのでご注意ください。
@「SATELLITE」の電源をOFFにする。
Aアンプの入力を切り替える。
Bプリアンプをミュート状態にする。
・アームのシェルコネクタの配線のプラスとマイナスが逆転しているものは正常に動作しません(古いグレースなど)。
・MM端子に直接接続して使用可能な高出力MCカートリッジは使用できません。
・アンプ側からDC電圧が供給されるため通常のシェルを接続すると取り付けているカートリッジが損傷する可能性があります。
現在はシェル部分の追加販売が未定のため、フィデリックス「SATELLITE」を接続するアームに対してカートリッジは1個に限定する必要があります。
YAMAHAには対応のサテライトアンプ部分が2個付属(シェル無し)していたと思いますが、「SATELLITE」にはシェル付きが1個しか付属していません。
使用しているJFETが生産完了のため「SATELLITE」自体も部品の在庫限りで生産完了となります。
◆試聴しました
試聴カートリッジには、よく使っているDENON「DL103」を使用。
通常接続のMCポジションの「DL-103」と比較試聴をしました。
シェル内にFETが取り付けられており、カートリッジの取り付けスペースには制約があり「DL-103」でギリギリ収まる感じとなります。
一聴して分かるのはエネルギー感の大幅な改善です!
堂々としたスケール感やダイナミックレンジは「DL-103」が数ランク上のカートリッジに聴こえます!!
低域のクオリティーが高くなり、厚みや剛性感がありながら少しも硬さを感じさせないサウンドが見事です!!
全体に鮮明で透明感の高いサウンド、音場が広くなりながら「音場の隅々まで見通せる!」と感じる、特に奥行き感が広く楽しい。楽器やボーカルの細かいニュアンスまで聴き取れる様になり、音像それぞれの輪郭もはっきりと感じる事が出来る!! 弦の爪弾く様やピアノのアタック音が大変美しく、リアル感じで生々しさを感じます。
漂うような雰囲気感がここまで聴き取れると感じたのはモニターサウンドの「DL-103」からは中々出来ない経験です。「DL-103」であらゆるジャンル、あらゆる年代のレコード盤が何の違和感なく聴く事が出来るのは驚きですね!!
フィデリックス「SATELLITE」を接続することで、愛用のMCカートリッジの性能を限界まで引き出す事が出来る様になると思われます。使いこなしには多少難度が高く、マニアックな製品となりますが、その様々な要素がクリアできる方には断然お勧めいたします!
今回は、新旧のギターのLPも聴きましたが、ピックで弾かれる強いアタックも、優しいタッチで爪弾かれる音も、いずれも美しく聴き入ってしまいました。