カテゴリから選ぶ


音場工房

[ 2025年 3月 25日付 ]



TADの最新ブックシェルフスピーカーをご紹介

ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。

今回ご紹介するのは、TADの最新スピーカー「TAD-ME1TX」(TAD Micro Evolution One)です。

オリジナル機の「TAD-ME1」は、2016年にステレオサウンド誌のグランプリを受賞した注目の商品でした。

基本構成はそのまま継承されていますが、細部にわたり丁寧にチューニングされており、見事な完成度を誇ります。



TAD(テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ)のサウンドコンセプトは「音像と音場の高次元での融合」。

TADの中核モデルとなる「Evolution」シリーズはコンパクトなサイズの中にTADの数々のノウハウが凝縮されており、日本が世界に誇るスピーカーとなっております。


◆TADの歴史を振り返ってみましょう

1978年、PIONEERの中から「プロフェッショナル・オーディオ事業の頂点」を目指し、TADブランド製品が市場に投入されました。

今年で47年目を迎え、実際にTADのプロ用スピーカーユニットは世界で高く評価され、ハイエンド・スタジオはもちろんのこと、イーグルスなどの著名なコンサートで使用されるに至っています。

TADのユニットはPIONEERのハイエンドシリーズ「EXCLUSIVE」にも使われていて、試聴室やイベントなどで見聴きした方も多いのではないでしょうか。

「EXCLUSIVE」はスタジオモニターとして発売された製品ですが、日本ではご家庭に導入された方も結構多く、人気モデルとなっていました。

その後、「EXCLUSIVE」の技術を活かしながら、ハイエンド・ホームユースの完成型のスピーカーへの展開を進め、2003年には、世界のオーディオ業界で大きな話題となったハイエンドスピーカー「TAD-M1」が登場しました。

従来のホーン方式から、より低歪みでトランジェントの良い「どこまでも純粋なサウンドの創造」をめざして、ユニットの設計からエンクロージャーに至るまで、完全な「ニューモデル」として生まれ変って発売。重量:130kgの超ド級モデルでした。


TADの主な開発方針は、Smooth Dispersion(自然な音の広がり)、そしてHigh Definition(滑らかな音)でした。録音に内包する情報をストレートに表し、スピーカーの存在を感じさせず、あたかも生演奏に臨席するかのような空間描写をすることが最大のテーマになって開発されています。

プロモニター的な精度の高い再現性と、音楽性を見事に融合し完成させたスピーカーとしてオーディオ歴史に名を残す逸品でした。しかし、このモデルは鳴らし難さでも超ド級であったため、鳴らすのには苦労したのを思い出します。

その後、TADのスピーカーは「リファレンス・シリーズ」のノウハウを活かしつつ、リーズナブルなコンシューマーモデル「エボリューション・シリーズ」へと受け継がれてきました。


◆では、最新のTADスピーカー「TAD-ME1TX」をご紹介します。

・理想的な点音源再生を実現した「9cmCST(※1)ドライバー」を採用


位相の一致したポイントから広帯域にわたって指向性をコントロールして再生する中高域用の同軸スピーカーユニット「9cmCSTドライバー」を搭載。安定した定位と自然な音場空間を再現。

ミッドレンジのコーンで同軸配置されたトゥイーターの指向特性を制御し、トゥイーターとミッドレンジのクロスオーバーにおける位相特性と指向特性を一致させることで、全帯域で自然な減衰特性と指向放射パターンを両立。

CSTドライバーのみで420Hz〜60kHzという広帯域再生を実現しており、「TAD-ME1TX」を象徴する高品質ユニットです。

(※1) CST:Coherent Source Transducer


・トゥイーターに独自の蒸着法で製造した新開発「25mmベリリウム振動板」を採用


同軸ユニットのトゥイーター部分には、軽量で剛性に優れたベリリウムを用いて、独自の真空蒸着法で製造した新開発の「25mmベリリウム振動板」を採用。

コンピューター解析による最適化手法「HSDOM(※2)」を用いて形状設計し、分割振動とピストンモーションの最適バランスを導き出すことで、60kHzまでの超広帯域再生を実現しています。

(※2) HSDOM:Harmonized Synthetic Diaphragm Optimum Method


・ミッドレンジに高内部損失の新開発「マグネシウム振動板」を採用

同軸ユニットのミッドレンジ部分には、軽量かつ内部損失の高いマグネシウム合金を用いた振動板を採用。

新たに、陽極酸化処理と塗装による複合処理を施して表面硬度のさらなる向上と損失付加を図るとともに、ボイスコイルからのリード引き出し部のわずかな共振をも抑える工夫が施されており、歪みの少ない澄み切った中音を実現しています。

また、磁気回路を抱えるフレームバスケットのアーム部の形状を見直し、大幅な強度アップとミッドレンジ背面におけるスムーズな音波の伝搬を実現しています。


・ウーファーに「MACC(※3)振動板」を採用


アラミドの織布と不織布を5層にラミネートした振動板をさらに改良し、センターキャップとコーンを一体化した1ピースのシェル状(殻形状)振動板の物性最適化を行うことで、豊かでクリアな低音を再生すると同時にカラレーションのない素直な中低域を再生します。

(※3) MACC:Multi-layered Aramid Composite Cone


・高い制振効果と強度をもつ「SILENT(※4)エンクロージャー」


高剛性のバーチプライウッド(樺合板)を骨組みに使用し、内部損失の高いMDF材と組み合わせることで高い強度と低共振を実現する「SILENTエンクロージャー」を採用。

エンクロージャーの左右の側板に、厚みを増した5mm厚の鋼板パネルを装着することで、キャビネットの共振をさらに低減します。

また、エンクロージャー内部の定在波解析を行い、最適な吸音材を選定して効果的に配置することで、音像・音場に悪影響を及ぼす内部定在波を排除しています。

(※4) SILENT:Structurally Inert Laminated Enclosure Technology


・自然で豊かな低域を再生する「Bidirectional ADSポート」


スリット形状のポート(ダクト)をエンクロージャーの両サイドに設置し、開口部をホーン形状にすることで、滑らかな空気の流れを実現するポートシステム「Bidirectional ADSポート」を継承しています。

大振幅時のポートノイズを低減するとともに、ポートからの内部定在波の漏洩を抑制することで、レスポンス良く豊かな低域を再生します。

また、ポートの開口部を前後・左右対称にレイアウトすることでポート駆動による振動を打ち消し、自然な低域を再生します。


◆担当者より

かつては日本製品にもハイエンドモデルと呼べるスピーカーが数多く発売されていましたが、残念ながら現在では数える程度しか存在していませんね。

そんな中でも「TAD」ブランドはハイエンドスピーカーのラインナップを揃えている唯一の「Made in Japan」ブランドといえるかもしれません。

今回ご紹介の「TAD-ME1TX」はTADが2019年より進めている【TX】化に沿って、細部にわたる徹底的な見直しが図られており、基本設計は継承されているものの、ほとんどの部材が新設計といえるスピーカーなんです。

中高域用の同軸スピーカーユニット「CSTドライバー」は更に完成度が上がっておりその自然な音場空間の再現性は見事です。

この「CSTドライバー」生かす為に、全てにわたり、きめの細かいチューニングが施されたと思われます。




◆「TAD-ME1」からの変更点

・ツイーターのベリリウム振動板は鍛造から蒸着製法に変更、大幅な軽量と高剛性を両立した振動板に。
・ミッドユニットのマグネシウム振動板も異なる表面処理により軽量化と耐久性を向上。
・各ユニットのフレームは剛性強化と背面開口部を拡大した新設計を採用。
・ウーファーは磁気回路の強化とフレーム形状を新設計、強力でスムーズなストロークを実現。
・エンクロージャは左右の側板に、厚みを増した5mm厚の鋼板パネルを装着、キャビネットの共振を低減。
・オプションのスタンドも見直されており剛性のアップが図られています。

本当に丁寧にチューニングが施されたと思われるサウンドは「Made in Japan」品質ならではのスピーカーといえます。

もちろん、そのサウンドは聴いていて楽しくなる躍動的で有機的サウンド、決して無機的なサウンドにならないのが素晴らしい製品です。

極少音量でもリアリティーが高く、心地よさとエネルギー感の両立は海外の高級スピーカーでもなかなか再現できない魅力といえます。

この価格帯は海外のハイエンドスピーカーの激戦区でもありますが、全く聴き劣りしないどころか、お勧めの上位にくる純国産スピーカーとして自信を持ってお勧めいたします。


スタンド設置時の寸法(mm)





今回ご紹介した商品はこちら



商品はこちら