[ 2025年 2月 4日付 ]
ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。
今回は、FOSTEX(フォステクス)から限定生産で発売された、ホーン型のスーパーツイーター「T90A-ST」をご紹介いたします。
新開発のリング型チタン振動板を搭載し、高精度切削のアルミ合金製ホーンとイコライザーが特徴となります。
FOSTEXの「T-90」「T-96」シリーズは、初期型からは30年以上の長い歴史があり、お使いの方も多いと思います。少しその歴史をご紹介します。
・振動板:アルミリング
・ホーン:アルミ
・再生周波数帯域:5kHz〜35kHz
・出力音圧レベル:106dB
・定格入力:50W
・カットオフ周波数:3.6kHz
・推奨クロスオーバー周波数:7kHz以上
・マグネット重量:100g(アルニコ内磁型)
・総重量:720g
・振動板:アルミリング
・ホーン:真鍮
・再生周波数帯域:4k〜33kHz
・出力音圧レベル:101dB
・定格入力:50W
・カットオフ周波数:3.9kHz以上
・推奨クロスオーバー周波数:8kHz以上
・マグネット質量:100g(アルニコ内磁型)
・総質量:780g
・振動板:アルミリング
・ホーン:アルミ合金肉厚
・再生周波数帯域:5kHz〜35kHz
・出力音圧レベル:106dB
・定格入力:50W
・カットオフ周波数:3.6kHz以上
・推奨クロスオーバー周波数:7kHz以上
・マグネット質量:100g(アルニコ内磁型)
・質量:800g
・振動板:アルミリング
・ホーン:ステンレス製
・再生周波数帯域:5k〜35kHz
・出力音圧レベル:103dB
・定格入力:15W
・カットオフ周波数:5kHz
・推奨クロスオーバー周波数:7kHz以上
・マグネット重量:100g(アルニコ内磁型)
・重量:1200g
・振動板:チタンリング
・ホーン:アルミ合金肉厚
・再生周波数帯域:5kHz〜20kHz
・出力音圧レベル:97dB
・定格入力:15W
・カットオフ周波数:3.6kHz以上
・推奨クロスオーバー周波数:7kHz以上
・マグネット質量:100g(アルニコ内磁型)
・質量:805g
◆限定モデル「T90A-ST」の特徴をご紹介
新製品「T90A-ST」のベースとなっているのはお馴染みの「T90A」です。「T90A-ST」は過去の限定モデルも含めた「T90」シリーズの集大成であり、最新仕様モデルとなっています。
ベースとなっている「T90A」と「T90A-ST」を並べるとホーン形状が全く異なる事が良く分かります。
ホーンの口径を大きく削って指向性を広くする事により、使いやすい特性を持っていると思われます。
大注目の点は、何と言っても新開発の振動板であるリング形状チタン振動板が採用されている事です。
ランジェントに優れ、クリアで浸透力のある音を放ちます。
精密切削加工を施したアルミ合金肉厚円筒形ホーンとイコライザーを装着、明瞭で浸透力のある音楽表現と、繊細でナチュラルな音質に適度な響きを持ち合わせています。
定評の低歪みアルニコ内磁型磁気回路により、十分に広い再生周波数帯域によって伸びやかな高域と優れたトランジェントを保有。
アルニコマグネットは小型ながら高い磁束密度を保有しています。
更にポールピースの表面に銅メッキ処理することで電流歪を軽減させ高音質化を実現しています。
スペックを見てみると新製品の「T90A-ST」は「T90A」から、大きく設計が変更されている事にお気づきの方も多いと思います。
まず再生周波数特性ですが、ベースの「T90A」が5kHz〜35kHzに対して「T90A-ST」は5kHz〜20kHzと高域の特性が悪くなっている?と思われるかもしれませんが、これはFOSTEXの測定基準の見直しによる公表値と、スーパーツイーターとして使い易い高域特性となっている為です!!(下記特性表を参照)
もう一点気になる事は出力音圧レベルが過去のモデルの中で突出して低くなっている事ではないでしょうか。
「T90A」の106dBに対して「T90A-ST」は97dBとなっており、9dBも低くなっています。
これは現在のツイーターの使われ方の変化に対応した結果です。
従来のツイーターの使われ方:高い音圧レベルが必要でした。
@マルチウェイの高域ユニットとしてシステムに組み込んでアッテネーターで音圧を調整する。
A長岡先生設計の超高効率のバックロードホーンシステムにコンデンサー1個のハイパスフィルター(6dB/oct)で接続する。
今回発売された「T90A-ST」は多くの方がお使いの普通のスピーカーシステムに『 スーパーツイーター 』として使う事も出来るように音圧レベルが下げられています。
勿論今までの様にバックロードホーンシステムへの接続でも支障が出ない様にも設計されているとの事で、絶妙なバランスと言える設計なんです。
バックロードホーンシステムをはじめ様々なスピーカーシステムにアドオンして、自然で見通しの良い高精細な音場をお楽しみいただける限定生産のスペシャルユニットです。
◆担当者より
スーパーツイーターの効果については専用のユニットも発売されており、音質改善に効果がある事は良く知られていると思います。ただし、FOSTEXのホーンツイーターに関しては効率が高すぎて、普通のスピーカーのスーパーツイーターに使うには、かなり高い周波数で接続するか、アッテネーターを追加するなどのノウハウが必要でした。
ホーンツイーターはアルミ削り出しのホーンが美しく、存在感もあり、デザイン的にも格好良く、スーパーツイーターに使用したいとの要望も多かったようです。
強力な磁気回路と前面のホーンの効果により、切れが良く、エネルギー感も高く、他のユニットにはない素晴らしい特徴があります!!
FOSTEXのフルレンジユニットへの接続に関しては様々なノウハウが、すでに多くの実例が発表されておりますので今回は差し控えさせて頂きます。
ここでは普通のスピーカーをお使いの方に、この「TA90A-ST」をスーパーツイーターとして接続する方法を簡単にご説明いたします。
とは言っても接続されるスピーカーによって正解が大きく異なりますので一例としての接続方法をご紹介いたします。ただし、ある程度はオーディオのノウハウが必要な試みとなりますので予めご了承ください。
ユニット以外に必要な物はハイパスフィルター用のコンデンサーと接続するスピーカーケーブルとなります。
ケーブルに関してはツイーター用である必要は無く、余っているスピーカーケーブルがあれば何の問題もありません。
コンデンサーは「T90A-ST」のグレードを考えるとFOSTEXのCXシリーズか同レベルの製品がお勧めです。一般的な効率とインピーダンスのスピーカーであれば最も小さい0.22μFで違和感なくお使い頂けるのではないかと思います。
音圧レベルが非常に低かったり、インピーダンスの高いスピーカーの場合はもっと小さいコンデンサーが必要となると思われます。逆に音圧レベルが高い、インピーダンスの低いスピーカーの場合はもう少し大きなコンデンサーが良いでしょう。
容量が小さいコンデンサーほど高い周波数でのハイパスカットとなります(コンデンサー1個のハイパスは緩やかな-6dB)。
※例えば「ボーカル」を基準として考えた場合は・・
低めの周波数でカットするとツイーターが強くなり「ボーカル」が明瞭でくっきりとします。
高い周波数でカットするとツイーターが弱くなり厚みのある「ボーカル」になります。
※当店では小容量のコンデンサーの取り扱いはございません。「フィルムコンデンサー」を扱っている電子部品ショップ等をご利用ください。
※最初は価格の安いフィルムコンデンサー(規格は500VDC前後)を用意されて色々試して最適な周波数が確認出来てから高品質コンデンサーを購入されるのが良いかもしれません。
※接続する場合は、メインのスピーカーのデーターに揃えて繋ぐというよりも、音圧は控えめにして若干のニュアンスを加えるような使い方が良いと思われます。
メインスピーカーのサウンドに寄り添うよう自然なイメージで調整出来ると飽きずに長く愛用できるかと思います。
サブウーハーを追加するとき、メイン側の低域をわざわざカットしないのと同様の接続方法となります。
大まかな(C)の値と基準として、高域を出したいときは(C)の値を大きく、逆に抑えたいときは(C)の値を小さくするという調整になります。
※コンデンサ(C)の値(8Ω)
・0.22μF = 90KHz〜-6dBカーブ
・0.33μF = 60KHz〜
・0.47μF = 42KHz〜
・0.68μF = 29KHz〜
「T90A-ST」はホーン型としては効率が低いですが、それでも97dBも有り、市販されている一般的なスピーカーよりも高効率ですので、低い周波数でつなげるとかなり強力に主張してきますのでご注意ください。(市販されている一般的なスーパーツイーターで90dB程度です)