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音場工房

[ 2024年 6月 11日付 ]



オルトフォン MM型カートリッジ新製品『 Concorde Music 』シリーズのご紹介

こんにちは、ハイエンドオーディオ担当 "ichinose" です。

今回は、オルトフォンより美しいデザインのMM型カートリッジ「Concorde」シリーズに、HiFi専用モデルの『 Concorde Music 』シリーズが久々に発売されましたので、ご紹介いたします。

オルトフォンの「Concorde」シリーズは1980年以降、DJ用モデルのみとなっていました。発売された『 Concorde Music 』シリーズは4グレード。オルトフォンの他のシリーズのカートリッジと同様に、色によってグレードが分かるようになっています。


◆各グレードをご紹介

■ Concorde Music Red(レッド)
エントリーモデルながらスタイラスチップには高性能な楕円針採用。高いコストパフォーマンスを実現。

コイル巻線には上位モデルと共通の銀メッキ高純度銅線を贅沢に採用した、非常にコストパフォーマンスに優れたモデル。エネルギッシュかつホットな音色でありながら、銀メッキ線由来の程よい煌びやかさをもった高音域を特徴とし、オルトフォンの理想とするサウンドを存分にご堪能いただけます。


■ Concorde Music Blue(ブルー)
スタイラスチップには無垢ダイアモンドの楕円針を採用。さらなるクリアさとワイドレンジ感を求める場合に最適。

無垢ダイアモンドの楕円針を採用したスタイラスチップにより、振動系部分の実効質量が小さくなり、針先の動作能力が向上。さらに剛性が上がり、音声信号の伝達速度が向上、音溝から音声信号を精緻かつ正確にピックアップすることが可能。さらなるクリアさとワイドレンジ感を実現。


■ Concorde Music Bronze(ブロンズ)
ハイエンドモデルに使用されている高性能な楕円針の一種、無垢のファインラインを採用。

スタイラスチップには、かつてのハイエンドモデルである「Concorde mc200」や「Concorde30」にも使用された高性能な楕円針の一種、無垢のファインラインを採用。さらにピックアップ能力が向上しており、シルキーで滑らか、かつ繊細な音色を信条とするサウンドが魅力です。


■ Concorde Music Black(ブラック)
スタイラスチップにラインコンタクト針の一種、シバタ針を採用。最高度の解像度かつクリアなサウンドを誇ります。

ファインライン針を上回る、高解像度かつクリアなサウンドを誇ります。オルトフォンならではの王道のアルミニウム製カンチレバーを使用することで、程よいしなやかさも持ち味としています。


◆オルトフォン(ortofon)「Concorde(コンコルド)」カートリッジの歴史

英仏航空の「コンコルド超音速旅客機(フランス語:Concorde)」に似たフォルムが特徴的な、オルトフォンの「Concorde」。
その姿はヘッドシェルとカートリッジのボディが一体化され、針先方向に向けて細くなってゆく、独特なものです。
この特異なカートリッジが製品化されたきっかけは、誕生した1979年当時にカートリッジメーカー各社が強く指向していた、ある理念に起因します。

当時のカートリッジの多くは、ローマス(軽質量)・ハイコンプライアンス(針先が動きやすい)を至上命題として開発されており、カートリッジ・トーンアームともに、現代の一般的なそれよりもさらに高感度であることを求められていました。
これを極限まで追求した時、理想的な形状として現れてきたのが、シェル一体型ボディのカートリッジです。
そしてこのボディは、当時の理想を現実のものとしただけでなく、SPUシリーズから引き継がれてきた「簡便さ」というコンセプトもそのまま継承しました。
カートリッジ本体のヘッドシェル取付や位置の調整、リードワイヤー配線を必要とせず、ユニバーサル型トーンアームのシェルコネクターに装着して、ゼロバランスと針圧を合わせたらそのまま使用可能と、まさに現代におけるユニバーサルカートリッジの先駆けであるともいえます。
※オーバーハングは52mmで固定(SPUと共通)されています。


1979年に発売された「Concorde10/20/30」
(写真は、Concorde30)

発売当時、その奇抜ながらも優れたデザインで大人気となりました。
画期的ともいえる、ローマス・ハイコンプライアンスモデルとして誕生したVMS(MM)タイプの「Concorde10/20/30」ですが、一体型でシェル込みの自重はなんと6.5gと超軽量で、ほとんどのアームに取り付け不可能でした。
カートリッジに付属の補助ウエイトをアームに取り付けて使用していました。
筆者は当時、SAEC「WE-407/23」に別売りの軽量ウエイトを取り付けて、「Concorde30」を使用していた記憶があります。
1980年に発売された「Concorde STD」は自重が16gで、一般的なプレイヤーで使用することが出来ました。


「Concorde STD」


1982年に発売された「mc100/200」
(写真は、mc200)

MC型としては驚異的に小型化された磁気回路と、高性能なダンピング機構を備え、当時の高性能モデルとして一世を風靡しました。現代オルトフォンのハイエンドMC型の技術的な礎となったカートリッジ(自重:16.5g)です。
また、特殊なモデルとしてはアームパイプ一体型のSMEアーム専用の究極モデル「SME-30H」などもありました。


「SME-30H」

高感度なトーンアームとの相性の良さ、色づけのない「正確(Accuracy)」な音色を特徴とし、他のカートリッジに見られない強烈な個性を有することから根強いファンに恵まれた「Concorde」シリーズでしたが、1980年代以降はHiFiカートリッジのラインナップは姿を消し、DJ用カートリッジとして発売されていました。


◆今回ご紹介する『 Concorde Music 』シリーズについて

上位グレードの一体型ボディーの仕様で統一された、全機種共通の一体型ボディが採用されています。
精悍なマットブラックを纏った『 Concorde Music 』シリーズのボディは、最上位の「Black」からエントリーモデルの「Red」に至るまで、全て共通です。
『 Concorde Music 』シリーズのスタイラス(交換針)は互換性があり、挿し換えることで容易にアップグレードが可能となります。

『 Concorde Music 』シリーズのボディのスタイラス装着部分には、抜け防止のロック機構が設けられています。
単にロックとして機能するだけではなく、スタイラスが定位置に装着されたと認識できることも目標としても開発。
スタイラスを装着する時に「パチッ」というクリック音がすることで、機構上とフィーリング双方でのスタイラスの確実な装着を確認できます。
さらに、フィンガー(指かけ)は、交換が可能な設計となっており、破損しても修理が可能です。(以前の「Concorde」は修理不可でした)

ボディ内部にはオルトフォンが誇る独自のMM型用磁気回路が備えられ、4本のスプリット・ポールピン(Sprit Pole Pins)に巻かれたコイル巻線は、全ての機種で銀メッキ高純度銅線を採用。
これまで、オルトフォンのMM型カートリッジでは「2M Black LVB 250」などの上位モデルにのみ採用されていた線材ですが、『 Concorde Music 』シリーズでは敢えてコスト面を度外視して「Red」も含めた全機種で採用されています。


◆『 Concorde Music 』シリーズ、理想のボディー機構について

一般的なカートリッジは機構の都合上、ヘッドシェル先端側に取り付けられており、動作時の重心位置が先端側に寄ることを避けられません。
トーンアームの軸中心位置から、カートリッジ先端方向を見た際の実効質量(この場合、カートリッジを含むアーム可動部分の質量)がカートリッジ先端側で増大し、(テーパー型と比較すると)トーンアームの感度や動作速度に差が生じてしまいます。

「Concorde」シリーズのテーパー型かつヘッドシェル一体のボディは、カートリッジ先端および針先部分の質量が最小となり、逆にヘッドシェル後端側に寄るにつれて、質量を増大させる事ができます。
そのため、「Concorde」シリーズはアームの動作時にカートリッジ起因の動作遅れを生じさせることなく、ただ「正確」に音声信号をピックアップすることができます。

また、このテーパー形状はカートリッジボディに存在する不要な体積を極限まで減らすことにも貢献しており、結果として、動作時に生じうる不要共振が再生音に付与されづらいという効果もあります。

そして、不要共振の徹底した排除を目指した結果、新たな『 Concorde Music 』シリーズのボディ組立にあたっては、超音波接合によって各部品を結合させる最先端の方式が採用されており、ボディとは異種素材である接着剤を排することで、不要共振の発生を防ぎ、同一素材で構成されたモノコックボディという理想的な状況を実現しています。

『 Concorde Music 』シリーズの流麗かつスマートなボディは、「accuracy in sound」というオルトフォンの理念をただ実直に、ありのままに具現化したものなのです。


◆完全新規開発された『 Concorde Music 』シリーズ専用ダンパー

ダンパーは、オルトフォンがカートリッジの生命線として極めて重視しているパーツです。
いかにピックアップ能力に優れたスタイラスや、伝達速度に優れたカンチレバーを使用したモデルであっても、その振動系(スタイラスチップ、カンチレバー、コイルあるいはマグネットなどの可動部分)の支持と制動を司るのはダンパーです。
オルトフォンは、自社カートリッジの全てのダンパーをデンマークの本社工場内に設けたダンパー専用ラボラトリーで開発・生産されています。

もちろん、『 Concorde Music 』シリーズのダンパーも同様で、開発時には直近の「2M Black LVB 250」や「Concorde MkII Elite」から得られた知見の全てを投入。これまでの「2M」シリーズのものとも異なる専用の完全新規仕様として誕生しています。


◆『 Concorde Music 』シリーズのグレードは基本的に針先のチップのみの違いとなっており、ボディーに関しては最上位モデルの「Black」の仕様が全てのモデルに採用されています。



各グレードのスペック比較


◆チップによる音質の違いについて解説いたします。


「Red」接合針と「Blue」無垢針の違い

ダイアモンド製のスタイラスチップには、接合針と無垢(Nude)針の2種類があります。
接合針は針の先端がダイアモンド、ベース部分が硬質な金属であり、それらを接合したもの、無垢針とはスタイラスチップ全体が無垢のダイアモンドで形成されたものを指します。
2種を比較した際の大まかな音色の傾向としては、接合針は密度のあるエネルギッシュな音色をもち、無垢針はクリアかつワイドなレンジ感となります。


◆「Red」「Blue」に採用されている楕円針(Elliptical・エリプティカル)

楕円針は、円錐形スタイラスの前・後部を削ったことにより、針先の断面が楕円形となったことから名づけられました。
カンチレバーに対しては楕円長軸側の先端部が音溝の起伏に当たるように取り付けられており、丸針に比べると忠実に音溝の細かな起伏をトレースすることが可能です。
このため、先述の音溝のセンターからずれた軌跡でトレースされてしまう問題や、再生音の歪み感を減少させることに成功しています。


◆「Bronze」に採用されているファインライン針(Fine Line)とは?

ファインライン針は、盤面とスタイラスチップの接点を細くした楕円針の一種です。
楕円針に比べて音溝の細かな起伏を忠実にトレースすることができ、音溝のセンターからの軌跡ずれや、再生音の歪み感を減少させています。
楕円針に比べると再生可能な周波数帯域が広く優れた再生能力を誇ります。


◆「Black」に採用されているシバタ針(Shibata)とは?

楕円針のさらなる高性能化を目指して誕生したもので、楕円針に比べるとスタイラスチップとレコード盤の音溝が接触する面がライン状に長く伸び、線接触するようになっています。
このため、シバタ針を含むいくつかのスタイラスはラインコンタクト針とも呼ばれています。
シバタ針の名は考案者である日本ビクター株式会社(当時)の柴田憲男氏に由来し、1970年代に実用化したCD-4(4チャンネルステレオ)再生に際して必要な50kHzまでの極めて広い周波数帯域を再生するために開発されました。
当時としては非常に画期的かつ現代でも高性能なスタイラスチップの代名詞であるシバタ針の特徴は、再生可能な周波数帯域が極めて広いこと、またレコード盤面とスタイラスチップの接触面がライン状に長くなることで圧力が分散されて、盤とスタイラス双方にかかる負荷が減ることが挙げられます。


◆担当者より

オルトフォン「Concorde」から、実に久しぶりにHiFi専用モデルのMM型カートリッジ『 Concorde Music 』シリーズが発売されました。
デンマークの工業デザイン賞を受賞している優れたデザインと佇まいで、HiFiのユーザーからも使いたいとのリクエストが非常に多く寄せられたため開発されたとのことです。
音楽愛好家のために設計された『 Concorde Music 』シリーズは取り付けが簡単な設計、オルトフォンならではのプレミアムサウンド、時代を超越した美しいデザインと魅力満載です。

『 Concorde Music 』シリーズではグレイドアップが簡単に出来る設計が重視されており、交換針以外のボディーは全て共通仕様となっていて、交換針を上位グレードに変更するだけで簡単に上位モデルの音質にグレイドアップが実現します。
最も低価格の「Red」にも、コイルシステムには銀メッキの無酸素銅が採用されており、価格を考えると贅沢な仕様で究極の入門モデルといえます。

『 Concorde Music 』シリーズのグレードによるサウンドクオリティーの違いは、先に発売された「2M」シリーズと同様とのことなので、さすがにオルトフォンといえる、細部に渡る入念なチューニングが施されていると思われ、それぞれのグレードで明確なクオリティーと、サウンドの優雅さの違いを感じさせてくれるでしょう。

近い将来には発売されると思われる、ボロンカンチレバー+シバタ針の最上級モデル「Concorde Music Black LVB」も楽しみですね。





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